2016.9.19

吉田桂二 間取り百年 木造建築学校

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吉田桂二  間取り百年  2006年出版
10年前、読んだ本を再読した.
内容は戦前、戦後、高度経済成長期、バブル以降、日本における住まいの間取りがこの100年でどのように変換してきたかを年代別に分けて考察する、というもの.
ある時は社会情勢、また家族の在り方、ある時は目覚ましく発展した家庭機器の出現により、その時代により形式を更新してきた住まいの間取り.
この本を初めて読んでから10年が経ち、再び読んで思った事、
住まいのカタチが更新されてきた流れの中で、居住性の向上や、家事労力の軽減等、素晴らしい方向に刷新された部分がある反面、「時代の風潮」であったり「その時代の当たり前(あっちがこうやっているからこうするのが普通)」といったような人間が持つ同調本能や、生産効率により均質にならされ、忘れられてしまったものがあるのではないか.
今忘れられてしまっているものを建築の造形コードとして復活させて逆の意味での目新しさを求めるのでは決してなく、その本質を再考したいと思う.
余談ですが・・・・
夜学生だった頃、吉田さんの書籍や建築知識での住まいの設計手法の連載などで大変勉強させてもらっていました.いつか吉田さんが開催されている木造建築学校の講習を受講したいと思っていて、独立初年度に門を叩き、東京に通いました.
僕が受講した年が最後の木造学校の年でした.
毎回赤ペンで添削されて渡される設計課題.吉田さんが少し手を入れると劇的に良くなるプランを見て、「自分はできない」ということをまざまざと教えられたのでした.
それはとても良い経験になりました.
意匠的に吉田さんを唸らせたい、との僕の欲望が空回りし、斜に構えたプランを提出しつづけるも返ってくる課題はいつも辛辣なコメントと渋い点数.
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最後の課題.このままだと間違いなく課題の平均合格点が取れなくて、卒業証書がもらえなくなるといよいよ焦ったことと、何とか一回でも吉田さんから良い点をもらいたい、との自尊心から、最後の課題は仕事を休んでまでして考えて課題を解き、この言葉を頂けたことはとても良い思い出で、この時はすごく嬉しかったです.
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(たぶん最初は90点だったのに、どこかがダメで、修正液で80点に訂正されているところがリアルです (笑))
吉田さんはこの本の冒頭で、
「書きながら思い付いた事は、この本は21世紀へ願いを託す遺書のようなものではないか、という思いであった」
と綴られていて、まさにこの再読は、昨年の12月に亡くなられた吉田さんから本ごしにメッセージをいただいたような気持ちになりました.
この本を再読し、なんにも知らない学生だった頃、書籍越しに本当にたくさんの知識を頂けたことや、実際に講習を受講していた頃のことを思い出しました.
この道を歩み続け、大きな足跡を残された偉大な先人に感謝の気持ちを込めてこのblogを綴ります.
僕も吉田さんが書かれたこの本の続き、21世紀前半の、この世界この道に身を置くものとして気を引き締め、真摯に日々の仕事と向き合っていきたいと思います.
ヨネダ設計舎ホームページURL http://www.yonedasekkeisha.com
米田雅樹 三重県 建築設計事務所