2023.6.8

長流亭へ



福井の現場の帰り道、竹原義二さんの著書で気になっていた、おとなり石川県の長流亭まで車で30分、足を伸ばす.

 

 


 

 




 


加賀市大聖寺にある江沼神社の境内に建つ長流亭.

もともとは藩主の別邸『川端御亭 かわばたおちん』と呼ばれていたそう. 

江沼神社の神主さんが鍵をあけてくださり、丁寧に色々と教えてくださいました.

1659年着工 時の藩主、前田利治により着工.設計は小堀遠州といわれる.

いったん基礎工事でストップし、その50年後1709年、3代目藩主前田利直により上棟.

なぜ工事再開までに50年の空白があったかというと、力があって徳川に警戒されていた前田藩がこの場所に石垣を組みはじめたところ、築城の準備をしている、謀反では、と疑いをかけられたため、配慮して一時中断したともいわれているそうです.




各所に遠州好みといわれるデザインが散りばめられています.

襖の下はつづら太鼓の意匠.左奥の入口建具は舶来物の様な模様.




竹欄間に注目.


左右で節の位置を違えています.

西洋ならば、シンメトリー(左右対称)で納めるのが定石でしょうが、あえて竹の節を揃えないことで流れに動きが生まれます.

右側の全開放する蔀戸の方へ開いていく流れをつくったものと感じました.



襖は七宝柄.前田家は皇族へ娘さんを嫁がせていて、桂離宮の普請にも大きな金銭融資を行ったそう.遠州好み.確かに、桂離宮の青と白の市松模様の襖の斬新なデザインに通じます.





点対象で並列する座敷.


床柱と書院脇の柱に注目.

(この手は、静かな口調で、しかし熱く詳しくレクチャーしてくださる神主さんの手です.)

あえて節がある木材を使い、節の位置を人の目線にぶつけ、さらにそれぞれ2本を合わせています.

これは普請の資金がなかったのではなく、目利きに秀でた藩主の
『節無しの良い材料はお金を出せば手に入れることができる.そうではなくてその材をどう見立て、どう使うかだ』
という言葉があるそうな.

お話を聴いていたら鳥肌が立ってきた・・・.



そういう目で見ていくと書院脇のこの木目も山に見立て、あえて開口の下に木目の山を絶妙に当てている・・・.


いま進んでいるプロジェクトに対する気持ちとシンクロする部分も多く、たいへん大きな感慨の気持ちをいただく.




次の間の床の間にかかる扇子.


『無事是貴人 ぶじこれきじん』


 

 


 

本床には 龍 .


導かれるように訪れた時間.大変学びをいただきました.来てよかった.




外部から見たこのプロポーションに惹かれて訪れた建築.

板の目の割り、下の板戸を止める横桟のバランス、上段の白い余白.

そう神主さんにお伝えすると、この基壇の笏谷石は二段分、建築当時よりも上がっているんですよ、とまた詳しくお教えくださいました.

良い建築.良い体験.



ありがとうございました.



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