用途:住宅
構造:木造+RC造+鉄骨造
竣工:2015
三重県伊勢市に流れる宮川沿いに建つ住居.
国の土木工事によりぽっかりと生まれた野原のような敷地.
建主より、少年の頃好きだった未来少年コナンにでてくる大地にささった宇宙船のような住まいをこの土地につくりたいと相談を受けた.
要望は、外壁は定期的なメンテナンスを施さなくても良いよう、コールテン鋼(耐候性鋼板)で住まいをつくりたいとの事だった.
錆びることで安定し、浸蝕から身を守るコールテン鋼.
別名、対候性鋼板と呼ばれ、一般鋼材の4~8倍の対候性を備え、耐用年数は200年以上である.
しっかりした防水層の上に通気層を確保し、コールテン鋼の流通原板を仕上げ層に使用する事で防水性、通気性、ノーメンテナンスの耐候性を備える.
対候性、コストメリット、防水性、ノーメンテナンス性.
それぞれの材料がもつ特性を活かし、重ねること.
二層の構成が材料特性を補い合い、長所を活かしあう.
この手法をクラディングという.
外壁の施工価格は塗壁と同等である.
鉄は地球の体積の実に3割をしめる元素である.
地球に北極と南極があるのは地球の自転でマグマ(溶けた鉄分)が回転し磁力が生まれることによる.
我々の血液が赤いのはそこに鉄分も流れているからである.
川の四季と植物の緑と鉄の色はとても親和性が良い.
それは鉄が地球にもともと存在している鉱物だからではないか.
自然の中で佇み、朽ちる美しさ.そこに寂びの精神を見る.
人が夕焼けを見て、胸に感じるものがあるのは、この身の中にある鉄に反応しているからなのかもしれないと思う.
余談だが、外壁の定期的なメンテナンスを避けた建主は、塗料問屋の社長である・・・.
NAGI 2017年夏 69号
photo
内観写真 katsushi kawai 2014年
外観写真 Shogo Yamazaki 2025年